タビフーフの旅を語るうえで外せないのが、このワンウェイルールです。
直訳すると「片道ルール」ということになりますが、これが実に奥深いわけです。
ワンウェイルールを支える第一の柱は、ルートをクロスさせないこと。
下図を見ていただければわかる通り、です。
第二の柱は、一度宿泊した場所には戻らないこと。
これも、下図の通りです。
「なんだ、簡単なルールじゃないの!」「これのどこが奥深いんだ!」と思われた皆さん、
次の図をよくご覧下さい。
ワンウェイルールの奥深さをわかっていただけたでしょうか?
(例外として、よんどころのない場合に限り、
一度宿泊した場所でも、 バスや列車の乗継ぎ等のために泊まらずに通過するだけならOK、
ということにしています。
田舎の小さな村など、近郊の大きな街からしかアクセスできない場所もあるからです。
また、一時帰国などで旅を中断した際は、
中断した場所から再スタートして、足跡を繋ぐことにしています。)
旅の経験がある方は察しがつくと思いますが、
このワンウェイルール、実にとんでもなくやっかいなルールであります。
世界には多くの、旅の要所となる場所があります。
交通の便が良く、情報が集まり易い、周辺地域への旅の基点となる街です。
バンコクやイスタンブールのような避けて通れない旅人タウンはもちろん、
中国雲南省なら昆明、ネパールのカトマンズ、インドならデリーやカルカッタ、
エジプトはカイロ、東アフリカならケニアのナイロビ、南アフリカのケープタウン、
南米はアルゼンチンのブエノスアイレス、ペルーのクスコやボリビアのラパス・・・・・・などなど、
数えだしたらキリがないそれらの要所全てを、二度通ることなく旅するのです。
早い話が、イスタンブールを二度通らずに世界一周ってことです。
それがどれほどメンドクサイことか、言わずもがなわかってもらえると思います。
メンドクサイだけでなく、見方によってはなんともアホらしいルールでもあります。
自分で決めといてこう言っちゃなんですけど、 このルールのおかげで随分と苦い思いもしています。
バングラデッシュに行けなかったのもそのせいです。
この場合、ネパールにいる時点で、バングラ行きを決意してれば良かったんです。
別のルートを通ってバングラ入りすることも出来ました。
ただ、「行きたい」と思ったのがカルカッタに着いてからだったのです。時すでに遅し。
このことから、ワンウェイルールを実行するには、
かなり早い時点で以後のルートを確定しなければならないことを学びました。
ありがとう、バングラデッシュ。いつか必ず行くからね。
このワンウェイルールに、下記の「陸路ルール」を加えると、
さらにどえらいことになるのが、島や島国への訪問です。
小さな島なら港や船の数が限られますし、
逆に大きな島だと、島内の移動にも非常に気を使います。
また、発行に時間のかかるビザを申請した際や、二週間に一度しか来ないフェリーを待つ際など、
旅人は通常、「ビザ待ち」「船待ち」という不毛な時間を消化するため、周辺地域を旅しますが、
ワンウェイルールのおかげで、私達にはそれが出来ません。
ただひたすら、ビザが出来上がるその日を待つのです。
各地で中〜長期滞在を余儀なくされてきたのは、その為です。
もとはと言えば、A型気質バリバリで凝り性の私が、
きれいなルート地図を作りたいからという安直な理由で始めたワンウェイの旅ですが、
では、きれいなルート地図とは一体なんなのか?
私ケメコの考えるきれいなルート地図をわかっていただくために、
まず、お馴染みのコレを、改めてご覧下さい。
どこから旅を始め、どこをどのような順序で通り、どういう経緯でどこにいるのか、
一目瞭然でわかってもらえると思います。どう?
もう少し具体的に図解してみましょう。
左が、ワンウェイルールを使用しない、一般的な旅ルート。
この旅人はA方面から来て、Bの街を基点にCDEを旅した後、F方面に抜けていますが、
ABCDEBFと旅したのか、ABEDCBFと旅したのかは、
この地図を見た限りではわかんないわけです。
A型気質バリバリで神経質な私には、これがどーも納得いかない。
一方、右がワンウェイルール適用の旅ルート。
あら不思議、ABCDEFと旅した軌跡が瞬間的に見て取れます。
す、すごいぞ!これぞきれいなルート地図!
という、このような、他人様から見ればくだらないこだわりの為にやってます、ええ。
馬鹿馬鹿しいですか?あ?
おおっと、だんだん卑屈になってきたので、
ワンウェイルールの名誉のためにも、最後にいくつか利点を挙げておきましょう!
まず、しつこいようですが、同じ場所を何度も通らずに済みます。
常に新しい地を求めるのは、これはもう旅人の本能のようなもので、それが満たされます。
現地の人達とも常に一期一会で、出会いをより大切に感じることができます。
通常なら旅人が使わないルートや迂回を余儀なくされるおかげで、
素敵な場所や素晴らしい人との、予期せぬ出会いが得られることがあります。
国境の開閉状況や交通路に関する事前研究が欠かせないので、
旅のにわか物知り博士になることもできます。
あと、やりがいがあります。
超マイナーな国境を突破した時、びっくりするような航路を見つけた時、
よっしゃキタ〜〜〜〜〜〜!!
とカイカンを得ることができます。
・・・・・・・えー、それだけですけど?
多くの旅仲間に「いつか絶対挫折するって!」と断言され、「マゾなの?」と白い目で見られ、
欧米人パッカーにも「なんてstupidなルールだ!今すぐ改めるべきだ!」と忠告される始末ですが、
A型気質バリバリで頑固一徹のケメコ、
皆様の応援を追い風に、行けるところまでワンウェイを貫く所存です。
飛行機を使わず、陸路(船などの海路を含む)移動のみで旅をすることは、
多くの旅人が持つテーマであり、ロマンでもあります。
まあロマンはどうでもいいんですが、私は飛行機があまり好きではありません。
乱気流怖いし、ハイジャック怖いし、窓の外に空しか見えないし、なんせ速すぎます。
ロマンと飛行機とどっちが好きかと聞かれたら、ちょっと悩むけど、ロマンの方が好きです。
なので飛行機には乗らないことにしました。
これまでは、陸続きの場所ではバスや列車を使って、そうでない場所は船で旅してきました。
鉄屑を運ぶ貨物船で湖を渡り、今にも沈みそうな木の小舟で海を渡り、
最難関の大西洋は大型コンテナ船で越えました。
船旅は、嵐怖いし、沈没も怖いし、窓の外には海しか見えないし、なんせ遅すぎますが、
いつか胸を張って「フネフーフ」を名乗れる日を夢見て、今後も頑張ります。
(ただし例外として、日本に一時帰国する際は飛行機を使ってます。
だって「親戚が亡くなったから帰っておいで」と言われてから、えっちらおっちら帰ったら、
日本に着く頃には葬式どころか三回忌になっちゃいますから。)
アフリカの小舟 | 大西洋横断のコンテナ船 | 豪華客船で南極クルーズ |
これはまあ、ルールじゃないし、ポリシーでもないし、単なる趣向なんですが。
やっぱ和食が好きなんですよ。日本食一番!ビバ日本食!
「せっかく旅行してるんだから土地の名物を食べなきゃもったいない」とおっしゃる向きもありますが、
それって「せっかくスッポン屋の息子なんだからスッポン食わなきゃもったいない」と似ています。
何年も何年も毎日毎晩スッポンばかり食ってられんのです。寿命が縮んでしまいます。
やっぱり、和食を食べてると元気が違います。
実は、チベットからインドまで共に旅した仲間のひとりが、
長期に及ぶ旅の間、日本食断ちルールを実行してまして。
それはもう壮絶でした。ネパールのカトマンズ(日本食天国)で皆で食事に行っても、
彼だけはコロッケとかハンバーグとか、洋食メニューしか注文しない。
しかも漬物や味噌汁には一切手を付けず。
まさに、涙を飲んで味噌汁飲まず状態ですよ。あの姿は尊敬に値しました。
そんな彼へのリスペクトを込めた、日本食は食える時に食えルールです。